◎地球温暖化とC02の本当の関係 日下: 残念ながら、SFのようには、二酸化炭素が増えても、植物は動かないわけですね。しかし動かなくても大繁殖することはあるでしょう。空中浮遊の植物性プランクトンが太陽に照らされた雨雲の中で大発生すると緑色の雲ができて、それが雨粒になって落ちてくれば野菜のように食べられるとか。まあ、そんなことより武田先生は、二酸化炭素の 増加と地球温暖化の関係について、疑義をはさんでおられますね。 武田: 温暖化とC02の関係については、C02が増えると温暖化する。だからC02を減らそうという運動になるわけです。 この話はちょっと専門的になってしまうんですが、簡単に触れておけば、人間が出したCO2が温暖化の原因になると考えられたのは、温室効果ガスが多くなると、地球から宇宙へと移動する熱を途中で止めて逃さない。そこで、C02が増えると、地球から宇宙に逃げる熱が少なくなって、地球が暖められるという理屈になります。だから、Co2を出さないようにしようというわけです。 しかし、私はそれに対して反証を示しています。ひとつは水の影響です。太陽から地球に届く光は、大気中の水蒸気によってかなり吸収されます。そこで大気を暖めます。つまり、大気を暖めるのは、温室効果ガスだけではなく、もともと太陽の光で暖められる。しかも、研究が進むと、地表からの熱で大気が暖められる温室効果より、太陽の熱で暖められたり、反射する影響のほうが大きいこともわかってきました。太陽の黒点と太陽風の強さ、それによる宇宙線の変化と雲のでき方などが地表の気温を決めるもう―つの大きな要因になるのです。 また海との関係も重要です。まず、キーリングという気象学者らによって海水温とC02の変化を年ごとにみると、最初に海水温が変化して、そのあとでC02が変化しているという整理がなされました。つまり、海水温が上がるとそのあとを追ってCo2が増え、海水温が下がると直後にC02が減っているのです。 つまり、これによると、C02が発生して気温が上がったのではなく、気温が上がったからC02が増えていたわけです。これは水温が高くなるほどC02が溶けなくなるという良く知られた現象です。つまり、Co2の多くは海水に溶けていて、海水温が上がると空気中に出ます。ですから、「気温が上がると大気中のC02が増える」ということにな ります。 また、地表の三分の二は海ですから、海水温の影響が大きい。 海というのはだいたい四千メートルの深さがあるわけですが、その内の表層の五百メートルだけは十五℃から二℃くらいで、それより深い三千五百メートルは全部二℃なわけですね。 大気は、体積が海洋の三倍です。数字が出てきてややこしいんですが、もともと、水は空気に較べて同じ体積で三千五百倍の熱を抱きます。これに体積の比率を加えると大気に対して海洋は熱を抱く力が一千倍なんです。ですから一千倍の熱を持つものがほとんどが二℃という低温であるということになるんです。 ですから、地球は寒冷化する可能性はとても強いのですが、急速に温暖化する可能性というのは、少ないと考えられます。生物の六億年の歴史を観ても、氷河期には大量絶滅していますが、温暖期に絶滅の記録はありません。 だから、温暖化して生物にとって危機的な状態になることは考えにくいのです。おまけに恐竜時代などは少なくとも現在のC02の濃度の五倍はあるのですから。 『作られた環境問題』NHKの環境報道に騙されるな! 武田邦彦・日下公人 (WAC 文庫 平成21年発行)より R061217 P87